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「空き缶拾い」という仕事は、意外とアリな転職か!? コロナ不況でもし職を失ったら…

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 東京の休業要請が解除され、経済活動もだいぶ再開してきました。しかし、すぐには景気が元に戻るわけじゃないでしょうし、しばらく不況が続くような気がします。あまり経済的に余裕がない私は、将来に対して漠然とした不安を抱かざるを得ません。10年後、20年後、自分はどうやって食っているんだろう、と。

 考えていると思考がどんどんネガティブなほうへ向かいます。そして辿り着いた答えは、

『空き缶拾い』

 でした。

 ネガティブが過ぎるって? でも町を見渡すと、生活困窮者っぽい風情のおっちゃんが、よく空き缶拾いをやってるじゃないですか。あの方々も、往時はまさか自分の将来に空き缶拾いがあるとは想像していなかったと思うんです。私がそうならないとは限らないですよね?

 じゃあ実際、あのおっちゃんらの生活ってどんな感じなんだろう。

 町に出かけ、彼らに“人生”を聞いてみましょう。

 ただその前に、まずは空き缶拾いについて書かれている書籍『ホームレス消滅』(村田らむ著・幻冬舎)あたりを読み、どんな仕事なのかを把握しとくか。

・ホームレスから空き缶を買い取るのは、金属スクラップ業者。

・都内であれば、決まった曜日、場所に、業者のトラックが回収にやって来る。

・買取ってもらえるのは、アルミ缶。

・缶は潰しているほうが高く買い取ってもらえる。

・その場で重さを計られ、お金は取っ払い。

・アルミ缶の買取り値段は、需要によって変動。だいたい1キロ90〜130円。

・北京オリンピック(2008年)の前は、アルミ缶バブルで、1キロ170円〜200円以上だった。

 なるほど、どんな仕事かは大まかにわかりました。では、町へ出かけましょう。

 歌舞伎町のはずれに、空き缶を詰めた大きな袋をいくつも持ったおっちゃんがいました。空き缶拾いの方だと思われます。

 しゃべりかけてみます。

「すみませーん。雑誌の者なんですけど」

 市井の人々の“人生”を調べているんですとか何とか伝え、適当な取材スタンスを取ります。

 職業をたずねると、おっちゃんはやはり、空き缶拾いを仕事にしている方でした。年齢は65才、空き缶拾いは10年以上やっているそうです。

「で、何を聞きたいの?」

「差し支えなければ、お仕事の稼ぎとか?」

「今はまぁ、月に10〜15万くらいかな」

 単純に30日で割ると、1日あたり3300円〜5000円です。1キロ120円の買取りで、アルミ缶を1缶15グラムとすると、1800缶〜2700缶という個数になります。

「そういう感じなんですね」

「でも、けっこう大変だったりもするよ」

 何でも、毎週、西早稲田の『戸山公園』に買取り業者がやってくるようですが、その際、持ち込んだ缶の中に吸い殻なんかが入っていると、「オメーから2度と買わねぇから」なんて恫喝されたりするとか。また、空き缶拾いには縄張り争いもあったり、集めて置いといた空き缶を盗まれたりするようなトラブルもあるそうです。

「いろいろあるんですね」

「でもまぁ、続けてるってことは、性に合ってんだな」

 おっ、人生観みたいな言葉が出ましたよ。本題を聞いてみますか。

「今、人生どうっすか?」

「悠々自適だよ」

 打てば響くというテンポで返事がきました。強がってない? マジでそう思ってます?

「でも、やっぱ生活は節約気味っすか。月10〜15万ってことは、そんなに余裕があるわけじゃないだろうし」

 ちょっと意地悪な質問をしてみると、おっちゃんがニヤっと笑いました。

「節約はしてるけど、キツキツではねーよ」

「そうなんですか?」

「オレ、生活保護もらってるし」

 えっ、そうなの? てっきりホームレスだと思ってたんだけど。

「節約してるってのは、光熱費を浮かすために家にはほとんど帰らず、路上生活してるってことね」

 すごい節約もあったもんだ!

「だからまぁ、生活のほうは保護の金で回ってるもんで。アルミ缶で稼いだ金でコレだよ」

 右手でパチンコのハンドルを握る仕草をするおっちゃん。いやー、そういう生活っすか。

 空き缶拾いと生活保護、そしてエクストリームな節約の路上生活――。

 私の中にあった漠然とした不安が、何だかフッと軽くなりました。この先10年後、20年後、何かのキッカケで何もかも失ったとしても、このおっちゃんをマネして立ち回れば、気楽に生きていけるのかもな。というか、別に何もかも失う前でも、普通の仕事で生きていくのが面倒になったら、そういう生活への“転職”もありなのかも。

 …って何をショーモナイことを考えてんだか。

 おっちゃんと別れ、歌舞伎町をぶらっと歩きだします。さて、頑張って働かないと。

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