東大生による
風俗嬢ディス
7月末、『ミス東大コンテスト2020』の出場者である東京大学の一人の現役女子大生が、以下のツィートをしました。
渋谷の老舗のファションヘルス『平成女学園』の看板をバックに撮影した写真が添えられたこのツイートが、今、巷の風俗嬢たちの間で“炎上”しています。
何でも、風俗嬢たちの目には、
<これが、社会的に地位の高い東大生による、風俗嬢ディス>
と映るんだとか。
正直、理解に苦しみます。なぜ風俗嬢らはこれほど捻じれた解釈をするんでしょうか? なるほど、単に拡散を楽しむべく、わざと暴論をのたまっているだけかもしませんが。
じゃあ、やり玉にあげられたミス東大ちゃんは、この炎上をどう捉えているんでしょうか? いや、それは何となく想像できます。たぶん、無視無視って感じだと思います。
ならば、平成女学園はどうでしょう? こんなふうに風俗嬢たちにより、勝手に“社会の中の位置”を決められ、いいとばっちり、心外に思っているのでは? もしかしたら在籍のオネーさん方が殺気立ったり、よからぬ問題が起こっているかもしれません。
よし、平成女学園に聞きにいってみましょう。
問題が起こってたら
どうかしてくれんの?
そんなわけで夜8時、渋谷へ。
『109』の裏手の路地に、現場の平成女学園はありました。
入り口から中をのぞくと、受付にいた従業員のニーさんがこちらに気づきました。
「いらっしゃいませ」
「すみません、自分、取材をしている者なんですが」
名刺を差し出し、素性を手短に伝えます。
ニーさんの顔色がちょっと曇りました。何だよ、お客じゃねーのかよってな感じで。
「…で、用件は?」
「それはですね、今、ツィッターで、こちらのお店に関する投稿が話題になっておりまして」
持参したツイッターのプリントアウトを見せます。
「ご存知でしょうか?」
「はい、知ってますよ」
知ってるのか、そりゃあ話が早い。
「では単刀直入にお伺いします。この騒ぎ、どう思われます?」
「はぁ…」
間が空きました。ニーさんが受付の裏へ引っ込んでいきます。どう答えればいいのか、他の従業員に相談しに行ったような感じです。これはやはり、問題が起こっているんじゃないの?
すると、上司らしき従業員の方が現れました。
「何でしょうか?」
「突然、すみません。ツイッターの炎上の件でお話を聞かせてもらいたいと思いまして。お店のほうには、何か問題が起こっていませんか?」
上司さんが表情を険しくし、こちらの目をのぞき込んできました。
「問題が起こっていたら、そちらがどうかしてくれんの?」
なにそれ? どういうニュアンスの質問でしょう? とりあえずトゲを感じます。もしかしてヤツ当たり?
「…ってことは、やっぱり問題が起こっているんです?」
「……」
「起こってるんですね?」
「起こってませんよ」
ズコっ。…だったらもう聞くことはありません。失礼しました。
★
従業員2人に礼を言い、店を出たところで、ふと頭上を見上げました。平成女学園の看板がステキに灯っています。夜空に瞬くという表現を使いたくなるほどに。
何の気なくスマホを構え、そっか、と思いました。ミス東大ちゃんが写真を撮り、ツイッターに投稿したのは、たぶんこのシンプルな衝動だったんでしょう。
炎上ツイートを見て、わざわざ平成女学園を訪ねた僕が言うのもあれですが、風俗嬢のみなさん、もうちょい落ち着いていきましょうよ。