見た目は
トイレ付きの物置き
7月末、ツィッターのタイムラインに、新宿区の新大久保の賃貸物件に関する、一つのツイートが流れてきました。
部屋の狭さをあげつらうようなコメントが記されています。何となく興味がわき、添付の間取り図と写真を拡大表示してみると…。
狭っ!
どういうこと?
物置き!?
まったく理解がおっつきません。部屋の半分がトイレってどういうことなんでしょう? もしかして何かのネタかしら?
と思いきや、ツイートに添えられていたURLを飛んでみると、賃貸情報サイトが表示されました。
どうやら、実在する賃貸のようです。
家賃:2.5万円 |
敷金/礼金:2.5万円/2.5万円 |
専有面積:3㎡ |
築年月:1970年11月 |
入居:'20年8月上旬 |
※水道光熱費込み |
部屋の写真は、5枚掲載されているのですが(うち3枚はツイートに添付されていたもの、残りは2枚は以下)、正直、トイレ付きの物置きにしか見えません。
いよいよ興味がわいてきました。
この物件、築年月は古いですが、いつから貸し出されているんでしょう? これまでに実際に借りて住んだ人はいるんでしょうか? その住み心地は?
気になります。実に気になります。
ひとまず、現場へ行ってみましょう。
インターネットも引いて
快適に過ごしていた
そんなわけで夕方、新大久保へ。賃貸情報サイトに載っていた地図を頼りに、駅から歩くこと15分。たどり着いた場所は、細い路地の入り口です。
路地を入っていった先、マンションの駐車場のような場所に、お目当ての物件はありました。
なるほど、ここですか。
見た目は完全に物置きです。
住居っぽさはゼロ。「これまでに借りて住んだ人はいないのかな?」なんつって期待して来てはみたものの、そんな人いないんじゃないかと思えてきました。
妙にソワソワしつつ、物件を眺めているときでした。マンションの中から一人のオバちゃんが出てきました。住人だと思われます。ちょっと話を聞いてみましょう。
「すみませーん」
「はい?」
「ぼく、このへんで部屋を探してまして」
そういう設定を演じ、いざ切り出します。
「この物置きみたいな物件の狭さが気になりまして。住むすまないは別として、何となく見学に来たんですけど」
「はぁ」
「すごい物件ですね。ちなみに、前はどんな方が住んでたんです?」
さぁどうだろう? ご存知かな? あるいは、住んでた人なんていないって言われる?
オバちゃんは記憶を辿るように少し宙を眺め、そして口を開きました。
「ここ半年くらいは空いたままになってますけど、これまでに、住んでた人は、2人いましたよ」
「マジっすか!」
「一人は3か月くらい、もう一人は1年くらいだったかな」
驚きです。借りた人いたんだ!
「どんな人たちだったんです?」
「2人とも男の人。外人とかじゃないですよ、日本人」
「年齢層は?」
「40代50代くらい」
「へー、もしかして住み心地とか聞かれてませんよね?」
期待せず尋ねてみたところ、オバちゃんはニヤリと笑いました。
「1年住んでた人とはしゃべったことありますけど」
「そうなんですか!」
「窓がほら、マンション側から丸見えだから開けれないんで、夏が暑くてツライとは言ってましたよ」
「なるほど。狭いことについては何か言われてませんでした?」
「それは言ってませんでしたね。その人は、インターネットも引いて、暑い以外は、けっこ快適に過ごしていたようですよ」
いやー、聞いてみるもんです。住めば都とは、まさにこのことですな。